公募展の話の続きになる。

 今回の「湖国を描く絵画展」(以下「湖国展」と略称)で気になったことがひとつ。
 先月、県内某町の絵画展でグランプリを取った人が、湖国展でも作品を出していた。
 その作品は某絵画展に出したものとそっくりで、完全に同じモチーフ、対象の位置関係や構図も同じ(もちろん2つの作品を直接比較したわけではないので違いはあるのだろうが、印象的には全く同じ作品に見えた)。
 そして、今回も高い評価を得て、グランプリ、金賞に次ぐ賞を受賞した。
 
 審査員は違うとはいえ、やはり一箇所で高い評価を得た作品は別の箇所でも同様な評価を得るというのは自然な話だ。
 しかし、出品する側として考えるなら、一体どういう意味でほとんど同じような作品を出すのだろうか。

 というのは、これがもし私なら、そういうことはやりたくないからだ。
 まるで賞金稼ぎをしているように見られそうに思うし、そのやり方に、なんだかいじましさを感じてしまう。
 賞金稼ぎなどではなく、純粋に自作品の評価を聞きたいというのなら、ほとんど同じ作品を何ヶ所にも出す意味はあるだろうか。1か所で高い評価を得れば、それで十分ではないのか。
 
 この湖国展では、以前にも似たようなことを経験している。
 私が初入選した年に、入賞したある作品があった。その作品は私も気に入っていて、作者の方と言葉をかわしたのを覚えている。
 その作者は、次の年、やはり同じモチーフで(タイトルも◯◯1と◯◯2の違いくらい)似たような感じの作品を出し、今度は入選だった。
 この人の絵の場合は、モチーフは同じであるものの、作品的には違うことがわかるから、別に構わないのかもしれない(ある審査員レベルの人に、同じような作品を出すことの是非を聞いたことがある。その人の返事は「少しでも違っていれば構わない」だった)。

 しかし上記の「そっくり」な絵を何度も出品する意味は何なのか、私にはよくわからない。
 そもそも似たような絵を二度三度と描く気がしないし、それが二度三度賞に輝いたとしても、何にも面白くないではないか。

 いや、中には生涯?同じモチーフ同じテーマで絵を描いている人もいるから(しかもタイトルまで毎回同じというような)、そのような人にとっては1ミリの違いで全く別の作品のように感じられるのかもしれない。

 ともあれ、少なくとも私は、前に賞を取ったからといって同じような絵を出そうという気にはなれない。むしろ「今度は全く違う絵で驚かせてやろう」と思う性分だ。
 湖国展でやはりそういうタイプの人もいる。
 一昨年田園風景を描いて入選したT氏などは、昨年はガラリと作風を変えて都会風景を描き、見事金賞に輝いた。
 私はT氏のやり方のほうを好ましく思う。

似た作品を出すことの意味…」への2件のフィードバック

  1. はじめまして。
    公募展に入賞された方の画風もわからず、そして公募展という文脈からは外れると思いますが、ふと、
    高橋野十郎の「蠟燭」が思い浮かびました。
    対象に求心力があり、本質的なものであれば、とらえるために(それともとらえられてしまった、か)、描き続けたくなるのではないか、と。
    対象と自身との無条件との飽くなき付き合いというのか。

  2. hibinosaraさん、コメントありがとうございます。
    高橋野十郎という画家を知らなかったのでネットで調べてみました。
    終生描き続けるモチーフがあるというのは素晴らしいことなのかもしれません。初心者の私にはおよびもよらないことですが…。
    この先長くやってみるしかなさそうです(^ ^)ヾ。
    ありがとうございます。

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